過去は今 〜30年目の青春の事実
               1996年度作品 デジタルビデオ 60分 カラー/モノクロ 字幕スーパー 音響なし
これは、デフ・ワールド(ろう者の世界)の一角で起こった奇妙な出来事を、ろう者の視点で描いたろう者中心のドラマ(デフ・ドラマ)である。父を亡くしたばかりの、ろう大学生・谷本が図書館で謎めいた女と知り合ってから遭遇する数々の事件!すべてが明らかになる感動的なラストまで見るものの心を離さないこのドラマは、スタッフ・キャスト全員がろう者というデフ・パワーがあってこそ生まれた作品であり、おおだて監督の長編デビュー作。

〈あらすじ〉
ある日、谷本が自宅の、亡父の部屋で整理をしている最中に、父の親友・種橋が訪れてくるが、心当たりがない。
その夜、亡父が「種橋に遺品を渡すな!」と告げる夢を見た谷本は、教室で居眠りしてひとり残されたおかげで、謎めいた女と再会する。急に親しくなる谷本に対して、父の遺品をFAXで催促する種橋。あるとき、父の部屋を荒らされ愕然とする谷本に、友人の大村が謎めいた女について意外な事実を告げる。そして、啓示的な夢を見た谷本が自宅の庭の木のふもとを掘り返してみると手応えがあった。父の遺品で、種橋が生前の父に握られていた「証拠」だった。ある事実を掴んだ谷本の前で、種橋が明らかにした真相は、予期を超えたものだった。
父の親友と名乗る種橋は何を企むのか?父の遺品に隠されていた秘密とは?そして謎の女の正体は



キャスト
谷本一郎                  宮山賢治
白山妙子                  細田美佳
種橋吉照                  小林 充
大村正信                  善岡 修
谷本の青年時代         黒木貞光
夏目ミカ                   大木葉子
刑事A                      粟野達人
刑事B                      猪塚栄也
谷本一郎の父           小笠原浩介


スタッフ
脚本                        塙真紀子
助監督                     千々岩恵子/渡辺浩之
照明                        中島 基
衣装                        秋田陽代
事務                        柳 義治
撮影・編集                塩野谷富彦/おおだて のぶひろ
字幕監修                  坂本健一
原案・監督                おおだて のぶひろ







小さな下町 〜さくらの詩
            2001年度作品  カラー  デジタルビデオ  字幕スーパー  1時間30分  一部音響あり
「敗戦色の残る昭和25年、東京下町に生きたろう者はどのような青春を送ってきたのだろうか。
(財)全日本ろうあ連盟が発足して3年目。まだまだ障害者ということで白い目で見られていた時代。
あらゆる面で差別を受けていた彼らは何を考え、差別と戦い、ろう協会を設立して来たのだろうか。
そして、どんな人間模様を描いてきたのだろうか。恋愛・友情・ろう者であるか故の苦しみ・・・。
ろう協会を設立すべく活動し続ける先輩・仲馬英一氏。そして、師と崇める藤木敏文氏との出会い。その中で、田村勝は成長していく。彼の目に映った風景はなんだったのか。


〈あらすじ〉
桜が咲き誇る4月のはじめ。
ろう協婦人部の東は、隅田川近くの病院に入院している老人を見舞う。老人は、物語の主人公である田村勝。東は写真立てを見て勝に問いかける。勝は遠い目で話し始める。時は昭和25年。20歳になった勝は、隅田の鉄工場で働いていた。ある日、先輩の丸島と居酒屋で飲んでいた勝は、チンピラの暴言を受け、乱闘する羽目になり、不幸にも警察に連行されてしまう。警察の取り調べに言葉の壁が立ちはだかり、勝は警官との意思伝達がうまくいかず、悔しさを覚えた。そんな時、ろう運動家の講演会があると知り、先輩と共に参加する。講演会で勝は、会社の先輩でもある仲馬の紹介で、ろう女性の隅田さくらと出会う。仲馬は隅田地区にろう部会を設立すべく活動を展開する。
ろう部会設立の協賛金集めは、障害者団体と交渉が失敗に終わり、行き詰まる。これを聞いた勝は、所詮聞こえる者とろう者は協力できないと主張し、丸島先輩と衝突してしまう。
さくらは、丸島先輩から話を聞き、勝を心配する。さくらは勝と会い、重度の心臓病があると告白する。驚いた勝は、設立準備に日々頑張っている姿を思い、設立準備に再び協力する。仲馬は自腹と会社の設備を使用し、設立準備を続ける。
設立総会を迎えた当日、会場にさくらの姿が見えないことに不安を感じた勝は、さくらの家に駆けつける。たどり着いた勝は衝撃を襲われた。勝の見たものは?さくらの行方はいかに?下町のろう者人情を描いたヒューマンドラマ。



キャスト
田村 勝                 善岡 修
隅田さくら                   飯島順子
丸島源助                   直井貴司
仲馬英一                   原   朋久
東九重子                   吉野信子
勝の老人役                 山本 明
勝の母親                     大嶋直美
チンピラ                 海老塚一浩
藤木先生(友情出演)    那須英彰
左藤勝己(友情出演)    飯田勝巳

スタッフ
プロデューサー               小図子玲治/井手憲一
助監督                       加藤康宏/沢井清一
助手                          仲田英嗣/河野佑介
字幕編集                    岡田憲和
音楽編集                    三上素乃子
脚本/編集/監督            おおだて のぶひろ







トワイライトゾーン・オブ・ザ・デフ プレゼント
            2001年度作品  カラー  デジタルビデオ  字幕スーパー  1時間30分  一部音響あり
トワイライトゾーンとは、英訳すると「夕闇地域」となるが、ある意味では、異次元の世界という。1950年代の最後の年、アメリカのTVドラマ界に30分物のSFアンソロジーという画期的な番組が誕生した。不思議な体験に引き込まれるという、当時としては珍しいジャンルで大きな反響があった。そして1983年、映画版「トワイライトゾーン−超次元の体験−」が公開された。スティーブン・スピルバーグ監督はじめ、3名の著名な映画監督がブラックユーモアたっぷりにオムニバス形式のストーリーを制作したものだが、大きな反響を呼んだ。このスピルバーク監督の作品に感銘を受けた、おおだてのぶひろ氏が(当時はまだ映画作品を作っていなかった)人形劇演出家の庄崎隆志氏と組んで、聴覚障害者による「トワイライトゾーン・オブ・ザ・デフ」というタイトルで手話劇を制作した。そもそもこのタイトルは、庄崎氏がもじって付けた。異次元の世界からやってきた謎の男が、希望のパワーを恵まれていない人に与えるというストーリーであるが、分かりやすい内容で笑いと驚きをたっぷりと楽しめ、かなり好評であった。そして10年後の199812月、おおだてのぶひろ映画監督が即席ドラマを手懸けたのが、オリジナル版『プレゼント』であった。クリスマスイブの日、彼女のいない聴覚障害の青年に可愛い女の子が出現し、青年とデートする5分ほどのショートストーリーである。おおだて監督が、クリスマス間近にいきなりひらめき、「過去は今」作品に出演していた善岡修氏を起用、彼が初主演した作品である。これを6年後にオリジナル版と異なるストーリーで脚色したのが今回の作品になる。おおだて監督は、不意死の若者が増える世の中、生きる喜びを感じてもらえるような作品にしたいと考え、以前制作した『プレゼント』を更に完成させる為に、ファンタジー路線でアレンジし、リメイク版とした。全国から、将来性や注目度で期待可能な役者達を選抜し、若者中心で起用した、新しい視線を持った作品である。身に覚えのない死で天国に行かされたことから物語がはじまる。「天国」は、死後の天上の極楽地と言う想像上の場所で現実には存在しない空想の世界。また「天国」という言葉は、外来語であるが日本で昔から言う「常世の国」で、まさにアンソロジーのひとつであり、誰でも考えられる身近な空想そのもの。空想の産物である「天国」のところに天使という人間の姿をした使者が居り、その上級使者という大天使、さらに高級使者の天使長が居る。天使が誤って、死ぬべきではない人を天国に送ってしまい、事態を収拾するためにめったい現れない天使長が降臨する。生死の裁判シーンは、姿を現わさない神(天使長の頭上にある光)の代わりに天使長が継げる設定だが、天使も人間臭いところがあったほうがまさにブラックユーモアと喩えられる。物語は、「天国」から始まり、現実なのか空想なのか、自分なりに身体全体で映像感覚を体験する・・映画の醍醐味はそこにあるのではないだろうか。

〈あらすじ〉
目を開けたタケルは蝋燭の炎の向こうで、なぜ古代衣装の女性が座っているのか理解できなかった。
そして暗闇の中から出てきたソムリエ服の青年を見て、呆然とする・・・
駅前のカフェに入ったタケルは、トオルから3日前にできたというほやほやの恋人を紹介される。
そして今度の誕生日に一緒にディナーしないかと、持ちかけられた。アツアツの二人と一緒だなんて、とんでもない!と断るタケル。
恋人がいないんだねと、トオルは冷やかし、隣席の女性に目をやる。
一目ぼれしてしまったタケルは、声を掛けてくれないか?と頼み、トオルは女性の所へ歩んでいく。
突然のトオルの行動に恋人カオリは、ナンパしていると誤解しトオルをひっぱたき、店を出てしまう。慌てて後を追うトオル。
可笑しく眺めていたタケルは、置き忘れた携帯電話に気が付き、トオルを追いかけた。が、目にしたものは交通事故に遭い、頭から血を流すトオルの姿だった・・・・
我に返ったタケルはソムリエ姿の青年がトオルだと気づき、何故自分が天国にいるのか解らなかった。そして、自分はひき逃げ犯による暴行で死んだと、理解する。
おまえの姿は仮死状態だから、下界へ帰るかの決定権はタケルが決める事だと、天使トオルは促す。親友を失った苦しみをタケルは吐露しながら、ソムリエ試験に落ちた話をトオルに持ちかけた・・・天の掟を破り、感情を出してしまうトオルは永久消滅の裁きをうけるが、自分の分まで生きて欲しいとタケルに願う。天使長との契りの酒を口にしたタケルが見たものは・・・・?



キャスト
タケル                   白石 弘
トオル                   善岡 修
ユウ                    平野恵美
カオリ                    梶原寛子
チンピラ                  花岡泰成
幹部                   直井貴司
天使長                小泉文子

スタッフ
制作・脚本           おおだて のぶひろ
制作補          井手憲一
助監督          沢井清一/河野佑介
助手           戸張康子/上田園子
字幕編集        岡田憲和
字幕監修        小畑文子
音響ディレクター      大和定次
音楽           織田晃之祐
メイクコーディネーター   岡野 宏/大谷 香
メイク            末吉悦子/佐々木洋子
特殊衣装        松葉久子
スチール           山元康宏/栗原幹夫        
制作協力        庄崎隆志/池澤和夫/高宮一郎
撮影/編集/監督      おおだて のぶひろ







デフホラー 部屋
    2005年度 デジタルビデオ 字幕スーパー 「魂を食らう部屋」26分  「死者を呼ぶ部屋」18分  「張り紙のある部屋」35分 
ろう映画史上?のオムニバス形式のホラー作品である。
当たり前だが、ホラーだからこそ怖くなければならない。昔、ホラー映画の好きなSさんと真剣に論議したことがあった。
目に見えるだけではなく、スクリーンに敢えて狭い視野を見せ、ゆっくりと動かし、そこに何かあるような仕掛けを作るという結論に至った。
そこでテストとしてショートビデオを作ってみた。観賞した関係者の
意見をまとめてみたら、やはり見る人の感受性によって
受け取り方はまちまちになっていた。
音の効果で恐怖感の誘導することができるが、
視覚だけではやはり難しいんだなと実感した。
視覚だけではなく、潜在的な心理を引き出すような技が重要である。
ロケ中に説明できないほど奇怪な体験が襲った。
得体の知れない存在があると感じていた。
やはり前もってお祓いを済ませないと・・・


スタッフ
制作・脚本・編集   おおだてのぶひろ
脚色            小畑文子
撮影            若松昭朗 
撮影助手        和田幸平
照明            山本博一/大森節夫
助監督          澤井清一/戸張康子
マネージャー       井手憲一
アシスタント        諸星春那/君塚真一
スチール          盛山麻奈美
字幕監修        中村美鈴
監督            おおだてのぶひろ




◆第1話 魂を食らう部屋のあらすじ
友達からネットビジネスの紹介を受けた彰生は、雇用主である佐川雅司の部屋を訪ねる。
雅司は、彰生に留守番を頼み、ビジネスを展開しているアメリカへ旅立つ。
彰生は休憩時、本棚からある本を手に取り、昼食も忘れ、読みふけった。
ところが、佐川から部屋の鍵をもらうのを忘れていたのに気がつく。
鍵を気にしながら外出するが、帰宅後につけたテレビのニュースを見て、仰天する。
死体の入ったトランクに見覚えがある・・・。佐川の持っていたトランクだ!
不安になった彰生は、気分転換に本棚にあったDVDを鑑賞するが、悪夢におののく・・。
翌日見たテレビニュースは、トランスの死体は佐川雅司だったと伝えていた。
混乱して日付を確認する彰生。そして不気味な事実が起こる・・・
キャスト
河上彰生  白石 宏
佐川雅司  早瀬憲太郎
佐川進也  早瀬憲太郎
協力      柳田紀昭/早瀬憲太郎






◆第2話 死者を呼ぶ部屋のあらすじ
彼から別れの手紙を読み、半狂乱になった女は人形を投げ、命を絶つ。
統合失調症にかかったトシオに、退院許可が出た。
トシオの兄と恩師は迎えに行ったが、トシオが逃げてしまった。
退院前に自殺した恋人と暮らした部屋に、トシオは居た。
一方、トシオを探していた兄と恩師は、あの忌まわしい部屋に何かがあると話し、
その部屋へ急いだ・・・。
キャスト
トキオ     善岡 修
キミコ      中道景子
元教員   佐藤 茂
トキオの兄 榎本トオル
ユウコ     諸星春那
協力         デフパペットシアターひとみ 他






◆第3話 張り紙のある部屋のあらすじ
友人アイコの紹介で、規則だらけの寮生活から脱出し、安い部屋を見つけたリカ。
その部屋は、以前から変な張り紙が壁についたままだった。
目障りだからと、ポスターで隠し、自由を祝って酒盛りするリカとアイコ。
夜中に目覚めたアイコは、急に部屋を飛び出して以降、音沙汰なし。
アイコを案じながらも、デートした恋人を部屋に誘い、幸せな時間を過ごそうとしたリカ。
しかし、恋人シュウは夜半に目覚め、急に逃げ帰ってしまった。
不安に感じたリカは、先輩のノボルに頼み、ボディガードとして部屋に誘った。
リカに気があるノボルは、引き受けたが、夜半に何かを見ておののき、逃げ帰った・・・。
取り残されたリカは・・・・。
キャスト
リカ    岡田絵里香
リュウ    プア・ジェサダ
アイコ    山本一恵
寮長   森光 司
霊     戸張康子
協力    梶原瑞穂
            インドレストラン「モニーズ」 他







迂路(うろ)
                     2005年度作品  デジタルビデオ  カラー  63分  字幕スーパー
「迂路」はサスペンスでありながら、家族への帰還を描き、出演も年齢に関係なく多くのろう者が揃っており、アクションも抱負に取り入れました。
辰夫は幼いときある事件から記憶を失い、劣悪な環境に暮らすことで人格が変わってしまいます。昔では数え年7つになると一人前と言われており、七歳を境に人生の分かれ道が決まるというわらべ唄「通りゃんせ」を取り上げました。
「通りゃんせ」の唄は、ろう者にとってはあまりなじみのない唄と思われていますが、プロローグに山道のスローモーションがありますが、ここに不思議な印象を持たせました。奇跡を起こし、ハッピーエンドを思わせました。
ろう者は音の代わりに映像を視覚によって理解しているため、リアリティを追求しました。元々は、横浜で開催されたアートフェスティバル出品に向けて制作したものですが、より深みを引き出そうと完全版を制作し、40分から60分に延長しました。
さらに2006年5月10日〜14日までカナダのトロントで行なわれた「第1回トロント国際ろうフェスティバルアート&映画祭」(TIDEAF)に英語版の「迂路」と、日本で初めて制作されたろう映画「楽しき日曜日」のプロモーションをセットにして出品しました。
世界各地からエントリーされた31作品の中から大賞及び最優秀賞の2冠を獲得できたことはまさに「とおりゃんせ」の暗示を受けたような気がしました。「迂路」は逆から読むと「ろう=聾」になります。


キャスト            
曽我辰夫         那須英彰
辰夫の母          加藤晴美
辰夫の恋人        岡野めぐみ
辰夫の父          高 正次
部下            直井貴司
子供時代の辰夫     佐藤清寿
辰夫の子供時代の母   内野沙紀
辰夫の子供時代の父   池谷 勇
辰夫の祖父        鈴木茂男
運送業の運転手     中村総一郎
競馬の仲間        金井保夫
ホステス           小林美和
辰夫の育て男       前野明彦
金融業A           小佐野正和
金融業B          藤井理仁

スタッフ
製作/脚本/編集      おおだてのぶひろ    
製作                 早瀬憲太郎
撮影            若松昭朗/塩野谷富彦
助監督           戸張康子
小道具・脚色      小畑文子
撮影助手         大森節夫/谷島好恵
アシスタント         菅原美貴/前野照美/諸星春那
マネージャー        井手憲一
脚本協力・メイク     早瀬久美
スチール           佐塚博/山元康弘
協力             株式会社東京ビデオカム 
                株式会社ロイヤルウイング 他
監督                   おおだてのぶひろ    







デフコメディ 静かなラーメン屋
                       2007年度作品  デジタルビデオ カラー 10分 音響無し 字幕スーパー
米国のろう者がよく話している「デフジョーク」があり、それをドラマ化したのが、ペプシコーラのCMだという。
ネットで見たが、聴者でも分かりやすいストーリーであった。
出演の善岡修さんのアイデアをもとに脚色した。
ラーメンを食べるとき、話をすると麺が伸びてしまうため、話さないように仕掛けを施すという変わった店が実際にあるので、これを取り上げて、ろう者の特色を生かしてストーリーに盛り込んでみた。
知り合いのラーメン屋を借りて撮影した。狭い店内での撮影は容易じゃなかったが、ひとつのドラマにたった1日だけで撮影を実施したのは、初めてであった。ひとつ忘れないエピソードは、出演のろう女性が有名な女優に似ていたため、撮影中に国道を走っていた車が急に止まって見物に来てしまったことであった。

<あらすじ>
若いろうカップルは、行列のラーメン屋を見つけ、
話題のラーメン職人が経営していると知る。
待つこと30分、カップルは店に入った。店内は驚きの連続!?


キャスト
若いカップル    善岡修/寺田エリ
ラーメン職人    山本博一
店員       田中康隆/二尾和子
客         井手憲一
エキストラ     高正次/山崎員嗣/田辺丈士
          関一哉/前野明彦/松山智
          中道景子/グンガーマー・ツーシンバ
          細田千春/古谷怜香/原伸男
          橋本良二/山崎幸子/郡司貴史
          吉良暁生/佐藤幸子/田辺民子
          花井盛彦

スタッフ
制作/脚本   おおだて のぶひろ
助監督     井手憲一/沢井清一
撮影/編集   おおだて のぶひろ
スクリプター   北村眞衣子
照明       佐藤  茂/中村総一郎
美術       長谷川  学
字幕監修    小畑文子
現場整理    今井喜代子/塩手恭子
協力       長崎ちゃんぽん西海
          若松昭朗
          潟eックス
          叶ホ谷ライティングサービス
監督       おおだて のぶひろ







ありときりぎりす
2009年度作品  デジタルビデオ  カラー  35分  字幕スーパー
食べものが少なくなる厳しい冬の生活に備えて、夏の間からせっせと食料をため込むアリに対して、今を謳歌し楽しく歌って過ごせれば最高だと先行きに楽観的なキリギリス。これは有名なイソップ童話の一つだが、主人公も結末も国や民族によって大きく違っているようだ。悪い手本になるキリギリスは、地中海沿岸ではセミだそうだ。それがセミがほとんどいないヨーロッパ中部や北部に話が伝えられると主役はキリギリスに変わった。そしてウォルト・ディズニーによって、キリギリスの厳しい冬の生活を見かねたアリが食べ物を分けてやり、キリギリスはバイオリンを演奏して感謝の気持ちを表すというハートウォーミングなお話に変えられた。ハートウォーミングが得意なウォルト・ディズニーは、「危機に備えよ」と言う厳しい教訓と同時に、「すべての人を愛せよ」という心優しい教訓も付け加えた。現代生活は先の見通しが立たない。今の世の中、ディズニーが示したような心温まる話ばかりではないことは日々実感している。
2007年にアメリカに発して世界経済を揺るがせたリーマン・ショックは、アマゾン川をさかのぼるポロロッカのように、日本の経済界にも凄まじい打撃を与え企業の倒産が相次いだ。これまで、ディズニー版「アリとキリギリス」のような心優しい雇用主が多かった日本型経営では「社長といえば親も同然」の家族主義と「会社のためならたとえ火の中水の中」といった忠誠心に支えられ、一生勤め上げるという終身雇用制が当たり前だったのに、今や欧米型の、転職によってキャリアを積み、転職によって地位や収入を向上させる方向へと風向きが変わってきた。定年までは会社人間として必死になって働き、その後はのんびり趣味の世界で暮らしたいという願望は「アリとキリギリス」の双方を合わせたものとも言える。
 しかし、現代社会ではどんなに安定した企業でも、世界的に広がる不況の大波には勝てず倒産することがあり得るし、そうなれば終身雇用の安定性も一瞬にして吹っ飛ぶことをリーマン・ショックは教えてくれた。雇用促進法で一定比率の障害者雇用の義務があっても、経営不振となればまず人件費の削減、そして弱いものがまず標的にされる。
 冒頭シーンの、電車内であらぬ方を眺める主人公は、解雇されたショックで思考力を失ったのではなく、多くの情報があふれる現代社会で、必要な情報は扉の向こうに隠されているための不安さを表現している。トンネルを潜るシーンも、閉ざされた世界、情報の欠如した世界を表している。いつの間にか自分が学生時代を過ごした田園が広がる田舎に立ち戻ったのは、ふるさとの懐かしさに惹かれたのではなく、スピードに乗って慌しく動きまわる喧騒の大都会との対照を映像で表現したつもりである。都会は慌しく働くアリがモチーフ、田舎はノンビリと歌っているキリギリスがモチーフになっている。
 いまは殆ど見られなくなった木造校舎を探し、口話教育の様子を描いた過去のシーンも、昔を振り返る懐かしさではなく、ろう者のアイデンティティの喪失を表したかったからである。それぞれのシーンではどのカットをとっても色々な意味づけがあって構成されている。観客として思考は自由だから勝手な解釈をしてもらって結構だ。そこが映画の醍醐味であろう。ただ、この作品は「聾映(ろうえい)」という手法である。 「目玉の松ちゃん」が活躍した「サイレント映画」とは、音声や音響が一切ない特徴は同じだが全く違う面がある。それは、手話で表現する点である。「聾映」とは「ろう者」が作る映画である。ろう者は手話が母語であり普段話しかけるような自然な手話表現が必要である。
手話といっても手だけで表現するものではない。顔や体の動きもすべて言葉になる。手話にも文法があり、視覚に訴える言語として映像で伝えられる。それが出来るのはろう者自身であり、テレビや劇場公開の一般向け映画にはない独特な手法である。音響がない代わりに映像の表現でテンポを作り出すというのが聾映の特徴である。聾映は古くから存在しているが、まだ進化の過程である。「ありときりぎりす」のような様々な手法を探りながら「聾映」としての表現法を作り出して行かなければならない。




〈あらすじ〉
大企業に勤める、ろう者が様々な人と出会い、つらい過去と向き合う。
学生時代の同級生・「キリギリス」を久しぶりに向き合うことで見えてくる心の奥底。
真面目で誠実な「アリ」の本当の姿とは・?
人とのつながりを大切にすることで、心を開くことができるのか。
現在の「アリとキリギリス」の結末は?
キャスト
信濃真吾(成人)  那須 英彰
            (学生)  江副 悟史
上田幹夫(成人)    武藤 巧
            (学生)    牧谷 陽平
浅間幸人(学生)    高良 大樹
野村安雲(成人)    箱山 たつ子
            (学生)    三浦 早苗
ロバート先生     ウォータ ティールン
村上千沙         鈴木 早里菜
普通学校教員    鈴木 美代子
そば屋おかみさん    遠藤 なおみ
会社役員         蛭田 剛司
真吾の妻         坂根 亜里
真吾の娘         奥田 夕翔
同僚            小林 聖司
諏訪先生           佐田 明


スタッフ
プロデューサー     草野 真範
脚本         野口 礼奈
撮影・編集     おおだてのぶひろ
撮影助手        佐藤 剛史
助監督          板橋 光雄
進行            小野寺 実希/草野 久美子
照明            中澤 侑子
メイク             百瀬 広美/坂田 恵子
スチール           窪田 忠男/渡邉 伸司
メイキング          直井 貴司/今井 美香
監督助手        今井 喜久雄/牧内 智子
協力              信州上田フィルムコミッション
                      勝見 定弘  他
監督              おおだて のぶひろ





寄りびと
      2011年度作品  デジタルビデオ  カラー  30分  字幕スーパー
デフムービーエンターテインメントプロディアの第一作「小さな下町」は、昭和25年の東京都墨田区を舞台に、ろう協会の創立に向けて奮闘する若いろう者たちの青春を描いた物語である。
昭和というノスタルジーを持たせた描画を充実に、再現するというこだわりを持たせるために、全国の各地へ飛び回りロケーションして、完成度の高い作品にした。制作に苦心したこの作品は大好評になり、ろう映画のロングセラーとなった。この「小さな下町」が公開されてからちょうど、10年。主役として出演した善岡修さんは、今、人形劇団の代表として活躍中であり、主役の相棒役である直井貴司さんは、ユニークな風貌を活かして世界ろう映画祭グランプリ受賞作の「迂路」や「ゆずり葉」に幅広く出演している。
東京スカイツリーが新しいシンボルとなり、墨田が注目されている。そして10年ぶりに再会したかのように、善岡・直井コンビが東京スカイツリーをバックに再び演じるのだ。監督は、このコンビのためにとっておきの雰囲気が出せる脚本を練った。死ぬシーンは「小さな下町」に取り入れたが、このシーンを出すことによって感動を膨張するような細工は好ましくないと、監督は考え始めた。そのため5作目の「静かなラーメン屋」以来、死のシーンは作っていない。しかし、今回の「寄りびと」は死ぬ場面を入れているが、流れにとどまらないよう注意しながらストーリーを設定した。こうやって奇想天外な物語が始まるのである。
頼みとして身に寄せるところや人の事を指す「寄る辺」を分かり易くアレンジした造語である。「寄る辺」という言葉は、身寄りのない老人や障害者、病人の介護の対象によく使われる。
この作品の場合、初対面の人に接する人として、次元をこえて亡者と対話する風変わりな物語として設定している。いわば、アメージングな展開で、ミステリーゾーンに入ったような奇怪なストーリーで、現実であり空想に近い曖昧さを引き出すことを狙いとしている。潜在意識の知覚の媒体である、夢の中に起きた出来事が、物語の主体である。青森県の恐山に死者とコンタクトする「イタコ」が居るが、これは、死者を呼び寄せ、自分の体に憑依させ、死者からの伝言をする人である。依頼者は死者が見えないまま、口寄せしたイタコの声を死者の声として、聞くのである。
この作品が意味する「寄りびと」は、死者が直接相手に伝える方法で、憑依はしない。死者が、相手に見えるように現れて、相手に伝え、依頼するということになる。つまりは、聾的な、聾のための「イタコ」であるという発想である。


〈あらすじ〉
東京・隅田川の公園。吉井勝は重い足を止め、建設中の東京スカイツリーを見た。
あてもなくさまよった勝は、その場で座り込み眠ってしまった。
ハッと目覚めた勝は、傍に男がいることに気が付き、驚いてしまう。その男は手話で中山と名乗った。
中山は、自分の腹に刺し傷があることで、自分は殺され幽霊となってその場に彷徨っていたと気づく。
自分は死んだと悟った中山は勝にあることを依頼する。
ずっと逢っていない老いた母に、事実を伝えて欲しいと、勝に頼んだ。
勝は渋々アパートに向かっていく・・・。
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キャスト
川上 勝    善岡 修
中山の母   雨森 郁美
通り魔      板橋 光雄
OL         中道 景子
勝の姉     川本 倫子
中山源助   直井 貴司
スタッフ
撮影・編集    おおだて のぶひろ 
助監督      小林 雅和
照明        佐山  信二/榎本 トオル    
助手        串間 光幸/牧山  陽平 
運搬        今井 喜久雄
スクリプター       塩手 恭子
記録        佐藤 剛史
メイク         百瀬 広美 
照明指導       石井 和三
協力          東京ロケーションボックス  他

脚本・監督    おおだて のぶひろ





委託製作
「鼓動からのメッセージ
       〜小さな命の喜び〜」
(2000年 20分)
「アイドラ自動車保険」
(2005年 15分)
「嵯峨野小さな物語」
(2008年 15分)



「さがの白昼夢」
(2012年 4分)
「持田徹物語」
(2013年 40分)
「手話で語る横浜誕生物語」
(2015年 57分)